まだ小さい頃、家では鳥を飼っていました。
茶の間の鴨居から吊り下げられていた鳥カゴ。その中に青と黄色の2羽の鳥がいたのをボンヤリ覚えています。
家にはほかに犬と猫もいて、犬と猫はもちろん僕や妹たちの遊び友達でした。でも鳥カゴの位置が子供には高すぎたのか、鳥たちはあまりなじみがなかった気がします。触れるでも眺めるでもなく、たまに声を聞くくらい。どんな鳴き声だったのかも覚えていません。
今回の芝居には鳥を出そう、と決めたとき、そのあまりなじみのなかった鳥たちのことを思い出しました。あれは誰が飼おうと言い始めたのだろう、何の鳥だったのだろう、そして最後あの鳥たちはどうなったのだろう。
幼い頃の記憶の片隅で羽ばたいていた鳥たちのことを、もう1度こんなふうに考えるときがくるなんて想像もしていませんでした。ちょっと不思議です。
あ、「鳥を出そう」なんて書きましたが、実際に舞台の上に鳥が登場するわけではありません。どんなふうに鳥が出てくるのかは、ぜひ劇場でお確かめ下さい。
大勢の皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。
作・演出/今村幸市
知りたかったこと、
知らなければよかったこと、
たくさんあるのは、どっちだろう。
入院病棟の待合室。夜。足音。再会。疑い。過去。戸惑い。呼吸。まなざし。すれ違い。火事の夜。予言。誤解。たくらみ。鳥。カゴの中の鳥。カゴの外の鳥。
通り過ぎる人たちと、再会した人たちと、初めて出会った人たちの、小さな物語。